札幌の大歓楽街「すすきの」のど真ん中にそびえる古びた公団住宅「ススキノアパート」は昭和33(1958)年に建てられた道内最古の公団住宅として現存しているもので、老朽化著しいながらも未だに二階から五階までの居住フロアには住人が数多く暮らしている。
この建物の一階に「すすきの市場」があり、戦前の大正11(1922)年に置かれた廉売市場を前身とする歴史ある公設市場として現存。歓楽街に隣接する土地柄だけに飲食店からの需要が高い。さらに地下一階にあるのが「すすきのゼロ番地」と呼ばれる地下飲食街。そこへ降りる階段の壁には「ススキノ発祥の地」と書かれた看板まである。一直線に伸びる通路沿いに夥しい数のスナック・小料理屋・居酒屋が入居しており、知る人ぞ知る大人の隠れ家的な飲食街として機能している。
明治初期からの街の歴史を持つ北海道を代表する歓楽街にありながら、戦後の面影を匂わせる建物に乏しい界隈だが、何をもって「発祥の地」かとするのはさておき、街の戦後史をくまなく綴ってきた場所である事には違いない。