セキノ商店

足立区

環七通り沿い、隅田川と荒川に挟まれた中州地帯にあり今なお都内屈指の鉄道不毛地域として残る足立区新田。例外なく下町風情の強い街並みが見られる場所だが、そんな住宅地の一角にある一軒何の変哲も無い民家…傍目には自転車の修理までやっているお宅のようであるが、しかしその軒先には学校帰りの子供の自転車が何台も停まっていて、建物右側の開け放たれた扉の中を見ると、狭い店内に駄菓子が陳列されている傍らで子供が鉄板を囲って座って何かを食っている。子供が囲むテーブルの中央には出汁の入った鍋を見守る店主のお婆さんがいる。

ここは知る人ぞ知る土着店舗「セキノ商店」。この店では一杯40円、恐らく東京最安値でラーメンを提供していると思われ、要は駄菓子屋のような店なのだが、足立区新田界隈で育った人間にはよく知られているらしい。激安ラーメンの噂を聞きつけて隅田川や荒川を跨いでこの店の「こぶつゆラーメン」を食べに来る子供も居るという。麺はベビースター風の即席麺とトッピングは天カスオンリー。そこに婆さんお手製のこぶつゆスープが柄杓に汲まれて店の外のベンチに皿を載せてスープを豪快に注いで完成。まさに駄菓子ラーメンそのものだが、遊びに来た子供達は本当に美味そうに食べている。なお、50円の「とんこつラーメン」は謎の白い粉が掛かりクリーミーな味わいに変わるが、どこが「とんこつ」なのかは不明。

荒川・隅田川双方に囲まれた足立区のスキマタウン新田である当地だからこそ生き残ってきた店なのだろうか。店主の婆さんは80歳オーバーでかなりのご高齢。もはや貴重な昭和の日常風景である。

<追記>セキノ商店は2016年8月29日をもって閉店したそうです。麺の仕入先が廃業した事と店主のご高齢、お客の子供達への気遣いも理由との事。

足立区 王子神谷

足立区 王子神谷

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