近鉄布施駅の北西側、下町風情満開な商店街の一角にぽつんと残る、戦後の趣きを残した古い飲食街「寿三郎横町」。この界隈は戦後から開かれた赤線地帯「布施新地」があった影響で、大人の社交場として高度経済成長期に栄えた怪しげな飲食街がそこら中に点在し、この寿三郎横町もそうした場所の一つだった。夜な夜な酔客を強引に引きずり込む誘惑に満ちた夜の街であったのだろう。
ところが現在この場所を通り掛かると、殆ど廃墟同然と化したスナックや小料理屋の店舗が狭い路地にびっしり連なる異様な光景となっている。いつ解体されて無くなってもおかしくない雰囲気ですらあるが、それぞれの店構えも昭和のままで時が止まっているとしか形容できない。三味線で民謡が歌えるらしい酒場「クロンボ」のネーミングがまた昭和テイスト。駅前一等地の奇跡の昭和情景、いつまで生き残っていられるのだろう。
2017年4月4日に近隣の居酒屋失火により延焼、寿三郎横町は全焼し解体されてしまった。