宇多良炭坑

八重山郡

自然体験系の観光客が押し寄せる八重山諸島・西表島の浦内川にやってくると大抵の人々はカヌーに乗ってマリュウドの滝なんぞに行ったりするのだが、カヌーに乗らずに川沿いの道を延々と一キロくらい登っていくと、そこには西表炭坑の遺構の一つである「宇多良炭坑」、丸三炭坑宇多良鉱業所の跡地がある。戦前の昭和10(1935)年からジャングルの奥地であったこの土地を切り開いて炭坑村が作られたのだ。坑夫の生活はこのジャングルの奥地から出る事もできず、給料は脱走を防ぐ目的で「炭坑切符」という金券で支払われ、炭坑村内でしか使えず、マラリア感染の危険と隣合わせの暮らしを続けていたなど壮絶極まりない。現在はトロッコ軌道の煉瓦柱などに名残りを留めているのみで、ほぼ元のジャングルに戻っている。とてもここに集落があったとは想像できない。

タイトルとURLをコピーしました