JR鶴見駅からひと度乗ってしまうとこの先は工場と海しか無いだろうと先入観を抱かせる京浜工業地帯の足、鶴見線沿線を行くと鶴見駅から5つ目の「安善駅」北側一帯に広がるのが横浜市鶴見区寛政町。この川崎・鶴見エリアの中でも、産業道路から海側に位置し、完全に四方を工業地帯に囲まれた陸の孤島のような住宅街は旧日本鋼管の土地が不法占拠された在日コリアン地帯、川崎区池上町の存在と被る。
元々は戦前に浅野セメントやら東亜港湾といった企業の社宅街として整備された地域で、その当時に建設されたコンクリート平屋建ての住宅が何軒か残っている。町内にある銭湯「安善湯」も元は社宅暮らしの浅野セメント従業員相手の共同浴場だったらしく、21世紀に入り十数年経った今でも薪で湯を沸かすスタイルで現役営業中。隔絶された陸の孤島とも言える地域だけに移動販売の八百屋があったり町内には工場労働者向けに角打ち営業している酒屋や食堂などが細々と開いている。よもや横浜の中に、まるで北海道か九州あたりの昭和の炭鉱町のそれを思わせるような生活空間が存在していた事に驚いた。
