奈良県大和高田市。近鉄大阪線で大阪市内からも充分通勤圏にある街だが、奈良盆地の中にありまだまだ長閑な田園風景が残っている。たまたまこの街を通り掛かった時に、曙町という地区にマニアックなラーメン屋がある事を知り、そこで昼食を取る事にした。葛城川の土手道沿いに掘っ立て小屋に毛の生えたような建物があり「名物!ホルモンラーメン」と書かれた看板が掲げられている。おまけに周囲は古びた公営住宅、市立斎場、スクラップ工場などがあるガチなリバーサイドタウンである。この立地に何らかの確信を得て入店。
店内にはご主人の趣味であろう山の写真が各所に額縁に入れて飾られ、店の名前も「ラーメンハウス岳」というが、置いてあるメニューの数々が独特である。ラーメン類はテールラーメン、ホルモンラーメン、油カスラーメン、一品にはホルモン天ぷら、ミノポン、ごっちゃ煮(ホルモンの煮こごり)等、そして焼肉定食や丼物もあり、ツラミ定食、上豚丼といったものが頂ける。暫し、何故か韓流時代劇が流れているテレビをボケっと眺めつつ待っていると店主は慌ただしく店の外に置いてある冷凍庫から食材を運んできてはちゃっちゃと飯を作ってくれる。そしてやってきたのがこちらのテールラーメンとホルモン天ぷら。
ワイルド過ぎる店の外観からは想像できない、繊細な牛の旨味とよく煮込まれた牛テールの肉と共に啜るラーメンは上質。そしてホルモン天ぷらは「フク」と呼ばれる牛肺をスライスしてサクッと揚げたもので、値段の安さの割にはボリュームもあり酒のアテには良い。大阪南部や奈良県にはこうした一部地域でしか食されてこなかった独特の食文化がまだまだ残っている。誰かが「奈良に美味いものなし」と言っていたが、そんな事はないだろう。